STORY
「お前に甘えてもいいか?」
「つがいなんだから、当たり前だろ」
金狼族の王代ユドハと人間の元兵士ディリヤ、二人の間に生まれた狼の仔アシュ。
家族に新たに加わった養い子のユジュとアシュがほっこり優しい日々を過ごす中、ユドハの姉、エドナ姫が誘拐されて…!
エドナとライコウのロマンス、つがいとして助け合うユドハとディリヤ。
互いの弱みを見せられるのは、あなただけ。一人で生きて戦ってきたけれど、今は寄り添って、互いを愛で支えていく。
大人気シリーズ!
シリーズ第10作目となる本作『はなれがたいけもの 寄り添う愛を』ですが、どのような物語でしょうか?
前巻でユジュという新しい家族が増えたディリヤとユドハの狼の群れは、冬の王都ヒラで温かく過ごしています。何気ない会話からユドハの姉エドナには想い人がいると発覚し、さらにはそのエドナが視察先で行方不明になることから物語は動き始めます。王位継承者として王都を離れられないユドハの代わりに、エドナ捜索のため北の大地へと向かったディリヤを待ち受ける状況とは……。そして、いつもどおりの殺意高めのディリヤと権力で敵を殴る国王代理と、既刊の登場人物たちと、かわいい仔狼たちをご覧いただけます。
新作のタイトルは、どのようにお決めになりましたか? また、タイトルに込めた思いがおありでしたらお聞かせください。
副題にもある「寄り添う愛」の物語です。つがいへの愛。親から子への愛。子から親への愛。先生から弟子への愛。子供たちなりの愛。想い人への愛。友人への愛。主従の愛。それぞれの人物が普段どおりに生きているなかで自然と芽生える寄り添う心、どうすれば寄り添いあえるかを考えて行動に移すこと、そうしたことをタイトルに込めました。
創作に入られる際、タイトルとプロットは、どちらを先にお決めになりますか?
ざっくりタイトル候補を考えてプロットを作り、本文を書きながらタイトル候補を考え……と、おおよその目途を立てながら最終的にタイトルにぴったりの言葉を探していきます。1巻はタイトルがすぐ決まりましたが、最近は原稿が手を離れるぎりぎりまで考えることが多いです。
今作の読みどころやお好きなシーンのご紹介をお願いします。
ディリヤとエリハのシーン。エドナとライコウのシーン。既刊の登場人物が出張ってくるシーン。いつもとちょっと違うシチュエーションから始まるえっちシーン。特に、エドナとライコウのシーンは、初期の頃からずっと担当さんだけにお話していて、ここまで書けたらうれしいなぁと思いながら、このシーンに漕ぎつけることができました。それが好きなシーンです。雪上の戦闘シーンはお気に入りです。白と赤のコントラストをお楽しみください。
主要なキャラクターの誕生秘話やキャラ設定への思い入れなどをお聞かせください。
(名前の由来なども、お聞かせいただけますと嬉しいです)
一例として、アシュは「食べる」という意味なのですが、「この小さい生き物がもぐもぐいっぱい食べておなかぽんぽんに毎日過ごせますように」とディリヤが願って名付けた、という思い入れある名前です。アシュの長いほうの名前の一部にあるアーシュイスは「祝福」という意味です。登場人物の名前は全員、日本の古語・サンスクリット語・ラテン語・中国語・その他の言語から拝借してアレンジしていて、登場人物全員そんな感じで名付けています。今作ですと、(これは人物名ではないですが)、不凍港のある都コーラズは「凍らず=こおらず=コーラズ」といったふうに言葉遊びも多いです。その言葉遊びで人物名を決めることも多いです。それから、世代間で、名前の名付け方が違ったりします。金狼族の女性の若年層は、エディス+エドナ・リリ+エセルなど2つの言葉の合成ですが、お年寄り世代はクシナダ・スサノなど音が短く(かつ古語っぽく聞こえる)言葉です。金狼族はオスのほうが毛皮の色が派手で量も多く見た目が目立つので、基本的にメスのほうは名前や装いを豪奢にしています。
メインカップルのご紹介と彼らを描く上で、大切にされたことや、こだわられたことがありますか?
メインのディリヤとユドハは「とにかく話し合う二人にしよう!」ということを大切にしています。1巻はディリヤとユドハが別々に考えて行動して相手の気持ちを推し量りながら思いやって個人で動き、2巻目以降は互いにどう考えているかを知りたいと願い、話しあいながら行動し始め、近頃は会話がなくても雰囲気でなんとなく分かる、でも分からないこともある、というところまで成長しました。「二人が常にかわいい」のが大切なこだわりです。 先般、シャルムガット様からドラマCD化していただいたことで、脳内で登場人物に(声優さんの音声で)喋らせてみるということができるようになり、それぞれの人物像に奥行きが増しました。「物語の外でどうやって生きているかをもっと知りたい」「たぶん私(作者)の知らないところでこいつらはもっとなんかやらかしてる」と想像が膨らむので、その時の思いつきを見逃さず大切にしています。
シリーズに新たに登場してくるキャラクターのご紹介と彼らを描く上で、大切にされたことや、こだわられたことがありますか?
今作では、新たに「キネレス」という人物が登場します。俗に言う悪役です。腹の内側が見えない人間の男です。彼の傍には金狼族が一人と人間の青年が一人、傍に侍っています。これからディリヤたちと因縁が深くなっていきます。キネレスは、ユドハやディリヤとは、考えも生き方も子供への接し方も愛し方も戦い方も対極に位置する人物で、厄介な性格です。ついつい自分(作者)の想像の範囲内で納めてしまう悪役描写を「いやいやちょっと待て」と踏みとどまることに留意しています。悪役を書くのは楽しいので想像がどんどん膨らんで文字を打つ手が追いつかなくて原稿が遅れていきます。ごめんなさい。
メインキャラクターは、どんな二人(攻めと受け)ですか?
ユドハ(攻)は執着スパダリ物理的にも権力的にも最強な嫁大好き狼(国王代理)です。これもまたドラマCDの話になるのですが、収録時に、ユドハについて「愛に生きる男です。このお話は二人の愛で進む物語です」と説明させていただきました。あとあと考えると本当にその通りだな、と自分でも納得しています。戦うことも、守ることも、笑うことも、言葉を交わすことも、思いやることも、すべて愛しい人への愛ゆえ。そして、ユドハはその愛の差し出し方を間違えない男です。ディリヤ(受)は懐のデカくて深くて底なし沼みたいな男前で元暗殺者です。ユドハの愛のおかげで愛情たっぷりもらわないと生きていけないけものになっていますが、ユドハが有り余るほどの愛情を持っている男なので、二人は割れ鍋に綴じ蓋でうまいこといっています。ディリヤは、物理的に強いです。生まれ育ちの都合上、精神的な強さが育っていなかったのですが、愛を知ることで今作『寄り添う愛を』に相応しい愛し方ができるほど強くなりました。
各キャラクターの個性も読みどころの一つだと思います。彼らのスタイルに、テーマやこだわりがありましたら、教えてください。
(服装・持ち物・ヘアスタイルなど)
佐々木久美子先生にイラストを描いていただく時は、必須項目をお伝えして、詳細はお任せしています。いつもかっこよくて可愛くて素敵に仕上げてくださるので、「この服はディリヤの武器を収納しやすそう!」と再発見したり、ディリヤの額が出ているシーンで「おでこ出てるディリヤかわい~!」と叫んだり、「ディリヤのこの視線最高」と大好物を愛でたり、「ユドハはやっぱり軍服が似合うな」と再確認したり、「あしゅのあんよとしっぽかわゆいね~おめめもおみみもかわゆいね~」と癒されたりしています。そして、そう感じたところは忘れずに大切に描写して今後にも活かしていく、それがこだわりです。今作『寄り添う愛を』では、既刊の登場人物たちを冬の出で立ちでイラストにしていただいているのですが、豪奢な上着を身に付けているのがもう最高に性癖です。ユドハがすぐさま家族でおそろいの色を身に付けたりするのが狼っぽくて好きで、それは忘れないようにしています。
苦労された点や楽しかった点はどんなところでしょうか?
すぐに崖とか塔とか岸壁とか船上とか山中とか屋根とか高いところを作中に出してしまうので(そして大体戦闘シーン)、その時に「あれ? いまディリヤはどこ?」と見失います。今回も海沿いの崖で殺意高めのディリヤが活躍しています。位置関係を把握するために担当さんが簡易の見取り図を描いてくださるので助けていただいています。そして、そんなシーンほど楽しいです。
八十庭たづ先生の中で、巻数を重ねるうちにキャラクターやプロットに変化や発見がありましたか?
ありました。1巻で言うと、ユドハです。最初はワーカホリックで言葉遣いも丁寧だけど軍人気質でどこか語尾が強めな国王代理だったのが、いまはもうお父さん!そしてディリヤの良き伴侶!でも時々見え隠れするスケベ!そして威風堂々とした為政者!!です。いろんな面がたくさんあるのがユドハだなぁと思います。あと、ディリヤの父親であるエリハは、設定段階では最悪の悪役でクズ夫でクズ父みたいな位置づけにしていたのですが、お話を作りながら違うと感じたので現在の嫁と子供を愛してるけど表に出さないキャラになりました。
お気に入りのキャラクターや描き(動かし)やすい、または思い通りにならないなど、キャラクターで違いがありますか?
おおむねどの人物も思い通りに動いてくれますが、思い通りに動いてくれるまでに(作者の頭のなかで)めちゃめちゃ長い時間をかけて登場人物と口頭試問みたいにやりとりするので、登場人物と作者の間で妥協できるベストな形で動きました!というのが完成した小説です。
今回も家族愛満載かつ、エドナ姫をめぐるハラハラドキドキな展開も盛りだくさんな今作ですが、書くに当たって苦労した点、また、ここが好き!外せない!など特に意識されていることがありますか?
エドナとライコウの塔のシーンです。ここが書きたかった!!
何度もドラマCDの話と絡めてしまうので恐縮ですが、今回、この原稿に着手するのと同時期にエドナちゃんにも声をあてていただいたことで、人物の深掘りが進み、表現の幅がとても広がりました。セリフとしては重要ではないけれどエドナらしさが出る何気ないセリフをエドナが話す時に、エドナちゃんならこう言うな、こんなことを心配するな、こんなふうに気高いな、と……一つ一つの解像度がさらに上がった感じです。今回は、ディリヤやユドハに見せない、エドナの大好きな人にだけ見せる新たな一面を大事に描こうと意識しました。エドナとライコウのロマンスシーンが書けた時は満足しました。
執筆中のエピソードや裏話などがありましたら、お聞かせください。
ずっと自著のドラマCDを聴きながら原稿していました。モチベがあがりました。没入感すごい。普段、無音か爆音かのどちらかで書いているので新鮮でした。裏話というほどでもないのですが、今作『寄り添う愛を』は、コミコミスタジオ様でご購入いただくと、特典として書き下ろしSSの小冊子が付いてきます。特典本文はすんなりと書きあがったのですが、ぴったり素敵なタイトルを見つけられず、途中で「愛ってな、200種類以上あんねん」とかもう迷走してめちゃくちゃになって一回頭がパンクしました。3日くらい考えて「愛しきを讃えよ」を見つけました。大満足です。
癒しのアイテムや気分転換の方法、またハマっていることなどがおありですか?
『はなれがたいけもの』のアクリルスタンドやアクリルコースターを持って旅先で撮影することにハマっています。百均とかいろんなお店でオタグッズ保存のためのポーチや硬質ケースなどを販売していると知り、グッズが収納できたり家で飾れたり持ち運びできるぴったりの物を探すのが楽しいです。おススメがあったら教えていただきたいです。ホットアイマスクが定番の癒しです。これがないとすぐに眼精疲労が……。お化粧しておでかけするのもお風呂に入るのも好きです。この二つはその行動をしているとネタが思いつくし気分転換と運動不足解消にもなるからです。とんでもない出不精なので……。
BLで萌えるシチュエーションやキャラクター設定を教えていただけますか?
受が物理的に強い(ディリヤですね)。それに輪をかけて攻が強い(ユドハですね)。そして二人が相互に作用して高めあってもっと強くなる(ディリヤとユドハですね)。鉄板の好きシチュです。
作品を書かれる上で大切にされていることや心がけておられること、意識しておられることはありますか?
えっちシーンで暴走し過ぎない。好きなように書くと「その体位は破廉恥すぎるのではありませんこと!?あと四つん這い多すぎませんこと?」「その描写はいけませんわ~!!」「その文字列はNGでしてよ!!」「……ちょっと殿下!!!!!???」といった内容になりがちなので、心に箱入りの令嬢をお招きして書いています。
今後の作品でチャレンジしたいテーマやモチーフはありますか?
中華風BL、ファンタジーBL.、ブロマンス、現代BL、なんにでも挑戦していきたいと考えています。
読者様にメッセージをお願いします。
こんにちは、八十庭たづです。いつも応援していただきありがとうございます。新作『はなれがたいけもの 寄り添う愛を』をお届けいたします。今作では、過去に登場してディリヤとかかわった人物が何名か出張ってきます。それぞれの道を歩みながらも、それぞれの思いがあって、ディリヤに寄り添う役目を果たします。ディリヤもまた、これまで真摯に向き合い寄り添ってきた物事の積み重ねの結果、自分の足場を固めていることを実感していきます。前巻ですこし大きくなった十代のアシュをお届けしましたが、今作のアシュは仔狼です。ちっちゃなアシュらしさ満開の思いやりで、おにぎりに肉を巻き、魚を焼き、本を読みます。是非お楽しみください!
「新刊が楽しみです」「次の話が早く読みたい」「早く次をくれ」と言っていただける感想が本当に励みになります。はっぱをかけていただけると頑張れるタイプなので……。頂戴する感想のおかげで『はなれがたいけもの』を書き続けていられます。ありがとうございます。
はなれがたいけもの寄り添う愛を
リブレ
発売日:2025年07月18日