『アドレアの祝祭~聖獣王と幸運の番~』発売記念 宮本れん先生インタビュー

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インタビュー

今作はどんな物語でしょうか?

五人の獣人王候補と、五人の番の物語です。
獣人と人間が共生する世界を舞台に、王位継承権を巡る争いや敵国との戦い、そして種族や身分の壁を超えて結ばれる運命の恋を描きました。
小さな村でひとり慎ましく暮らしていたアンリは、ある日森で出会ったジークフリートに「おまえこそ我が運命」と宣言され、お城に招かれることになります。そこで彼の番になってほしいと頼まれるのですが、それには王位継承に絡んだ複雑な事情があって……。
一筋縄ではいかないふたりの恋を見守っていただけたらうれしいです。

今作はどのようなきっかけで生まれたのでしょうか?

「イケメンがいっぱい出るお話が書きたい!」と、身も蓋もないことを思ったのがはじまりでした(笑)
今回は、①おだやかで大人な芯のしっかりした溺愛攻、②力こそすべてと我が道を突き進む傲慢攻、③世話好きでフレンドリーな博愛攻、④誠実で頼りになるワンコ攻、⑤なにを考えているかわからないヤンデレ攻を取り揃えています。
思いついたまでは良かったのですが、キャラ設定をしている時点で早くもその大変さに気づいて途方に暮れました……。

創作に入られる際、タイトルとプロットは、どちらを先にお決めになりますか?

私の場合は同時です。
プロットではタイトル、テーマ、キャラクター、設定、ストーリーの5つをまとめるようにしていますが、その際の仮タイトルをそのまま正式タイトルとして採用いただくことが多いです。タイトルを考えるのが大好きなので、思い浮かんだアイディアはタイトルストックに入れているんですが、溜まる一方なのでどんどん形にしていきたいです!

新作のタイトルは、どのようにお決めになりましたか? また、タイトルに込めた思いがおありでしたらお聞かせください。

タイトルはプロットと同時に決めるので、やはり物語のエッセンスをぎゅっと凝縮したものになります。一番伝えたいこと、一番の見せ場のシーンを想起させるワードが来ることが多いです。
今回のメインタイトル『アドレアの祝祭』は、物語の舞台であるアドレア王国で即位の儀式を〈アドレアの祝祭〉と呼ぶことに由来しています。紆余曲折の末、五人の獣人王候補の中から王に選ばれた攻のジークフリートが〈聖獣〉として即位するラストシーンこそこのお話のハイライトであり、読んでくださる方にも誇らしく感じていただけるのではと思いましたので、象徴としてタイトルに持ってきました。

メインキャラクターは、どんな二人(攻めと受け)ですか?

受のアンリは、地に足をつけて健気に生きる頑張り屋さんです。
早くに流行病で両親を亡くし、村の仲間と助け合いながら細々とその日暮らしを営んでいました。ジークフリートに出会って生活が一変してからも持ち前の明るさや素直さは失わず、ジークフリートのために尽したいと奮闘します。
攻のジークフリートは、階級の頂点に立つ王族であるにもかかわらず、身分にこだわらない柔軟な思考を持つ誠実な獣人王子です。
アンリと出会って、愛というもののどうしようもなさや、大切な相手と育む深い絆を学んでいくことになります。愛のために言葉や態度を惜しまない溺愛攻でもありますよ。

主要なキャラクターの誕生秘話やキャラ設定への思い入れなどをお聞かせください。(名前の由来なども、お聞かせいただけますと嬉しいです)

アンリは「戦いを勝利に導く」と言われるカナリアを歌わせることができる特別な力を持っており、〈幸運の番〉と呼ばれています。そのため、カナリアの羽根の色を連想させる外観イメージとして金色の髪、蜂蜜色の瞳になりました。
ジークフリートはサーベルタイガーの獣人で、実際のサーベルタイガーと同じ赤銅色の長髪、焦げ茶の目をしています。この法則は他の獣人王候補たちも同じで、それぞれ黒豹や狼などの獣属性があり、それに即した外見を設定しています。

メインカップルのご紹介と、彼らを描く上で大切にされたことや、こだわられたことがありますか?

メインカップルはサーベルタイガーの獣人王子・ジークフリートと、戦いを勝利に導くカナリアを歌わせることができる〈幸運の番〉・アンリです。
偶然から出会い、お互いを深く知るうちに一対として、また生涯の伴侶として惹かれ合ったふたりですが、そんな彼らを描く上でこれだけはしないと決めていたのは「自分で終わりを決めない」ということでした。大きな困難に直面すると人は諦めてしまいそうになりますし、妥協することもしょっちゅうです。ですが、彼らには相手のため、そして自分のために頑張ってみてほしかったのです。そんなふたりは最後の最後まで運命に挑み続け、そしてふたりの力で栄光を掴みます。ぜひ見守っていただけたらうれしいです。

新作の読みどころやお好きなシーンを教えてください。

ひとつは、ジークフリートから愛を告げられていたにもかかわらず、王太子という彼の立場を思ってアンリが身を引こうとするシーン。それまで完璧に己を律してきたジークフリートが我を忘れて声を荒げます。「好きという気持ちは呪いだ。相手を縛れないとわかっていても、自分だけを縛り続ける」という彼の台詞は、楔として物語のその後にも影響を与えることになりました。
もうひとつは、ジークフリートがサーベルタイガーに獣化し、国を護るために戦うシーン。アンリも〈幸運の番〉として精いっぱい彼を補佐します。それまでうまく力を発揮することができなかったアンリでしたが、懸命な願いが通じ、土壇場で幸運を引き寄せます。天から光が降り注いだ瞬間のふたりの気持ちを読み取っていただけたらと願っています。

執筆中のエピソードや裏話などはございますか?

実は今回のお話、リンクスロマンス様から出していただいた『銀の祝福が降る夜に』と同じ世界観、同時系列で、舞台となる国だけが違います。なので、周辺国含めた関係性を考えるために地図が必要になりまして、これを作るのが結構大変でした。コピー用紙に鉛筆で山を描いたり、海を描いたり……山脈の名前を決めて、高さを決めて、そうなると季節風はこう流れるはずだからと農作物を選定して……という感じです。このあたりの経験がお話の冒頭、ジークフリートがアンリにアドレアという国の地理や人の特性を教えるシーンに活きました。
余談ですが、今回の表紙は『銀の祝福が降る夜に』と対のデザインにしていただきました。あちらは銀の祝福、こちらは金の祝祭。どちらもサマミヤ先生の美しいイラストが目印です。そんな世界観のつながりも楽しんでいただけたらうれしいです。

癒しのアイテムや気分転換の方法、またハマっていることなどがおありですか?

旅が好きで、常にあちこち出かけていたのですが、昨今はそれもままならず……。その分、語学や世界史、美術史にハマって本を読んだり映画を見たり、資格を取ったりして楽しんでいます。いつかまた自由にあちこち行けるようになったら、得た知識を総動員しながら世界各国の博物館や美術館を見て回りたいと思っています。

作品を書かれる上で大切にされていることや心がけておられること、意識しておられることはありますか?

物語の中でキャラクターは生きているということ。どんな脇役にもこれまでの、そしてこれからの人生があることを忘れないように、といつも心がけています。

今後の作品でチャレンジしたいテーマやモチーフはありますか?

最近はありがたいことに、ファンタジーを書かせていただける機会も増えました。一から世界観を構築する大変さはありますが、やはりそこが醍醐味だなと感じる部分でもあります。中世ヨーロッパが大好きで、いくつか続けて書いたので、これからはもう少し世界を広げて「青の都」と呼ばれるサマルカンドや、チベット、モンゴルを舞台にした民族BLなんていいなぁと。有名な王朝をモデルにしたヒストリカルファンタジーにも憧れます。こんな時だからこそ、本の中では自由に旅をしている気分を味わってほしいという思いがあります。

最後に、読者の皆様にメッセージをお願いします。

ここまでおつき合いくださりありがとうございました。
通算18冊目、リンクスロマンス様からは11冊目となる新刊『アドレアの祝祭~聖獣王と幸運の番~』を出していただく運びとなりました。異種族や身分差の壁を乗り越え、運命さえも味方につけて結ばれる溺愛ラブストーリー、どうかお手に取っていただけますように。そして少しでも楽しい時間をお過ごしいただけますようにと心から願っています。どうぞよろしくお願いいたします。

アドレアの祝祭~聖獣王と幸運の番~

宮本れん(イラスト: サマミヤアカザ)

幻冬舎/リンクスロマンス

発売日:2021年03月01日

アドレアの祝祭~聖獣王と幸運の番~

STORY

“聖獣王”に選ばれるのは、五人の王候補のうち誰なのかー―?
【サーベルタイガーの獣人王候補×健気な幸運の番】極上の身分差ファンタジー♥

清らかな歌声で動物たちに愛される才能を持つアンリは、両親を亡くし、のどかな村で一人健気に暮らしていた。
ある日、大雨の森で道に迷うジークフリートを助け、一晩を語りながら共に過ごしたアンリは、高貴な身分であろうに自分にも穏やかで優しく、真摯で頼もしい彼に、次第に心惹かれていく。
しかしそれも一夜限り、彼と離れ寂しく思っていたアンリの元に、数日後、王太子の遣いが現れ、アンリを王城へと招待するという。
実はジークフリートは、国を治める五人の領主の一人で【真の聖獣王】に最も近いといわれる、サーベルタイガーの獣人王候補だったのだ。
アンリこそが長年探し求めていた唯一無二の運命【幸運の番】の相手だと確信したという彼に、番になってくれと求められたアンリは――?

出版社様コメント

極上の恋愛を描き続ける宮本れん先生の、書き下ろしノベルス最新作! 今作は、2019年に発売し大反響だった「銀の祝福が降る夜に」と世界&時代を共にする異世界ファンタジーBL。
聖獣王という世界の要となる存在――五人の王候補とその番をめぐる運命が廻り始めます。今回はその中でも、「聖獣王に一番近い男」といわれるサーベルタイガーの獣人と、のどかな村で密やかに暮らす健気な青年が主人公。身分や育ちの差から、求愛を受け止めることができない姿がとにかくいじらしい……!! 読み応え◎の今作をどうぞお見逃しなく!

©️宮本れん/サマミヤアカザ,幻冬舎コミックス

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