『とのこい』発売記念 朝丘 戻先生特設ページ

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インタビュー

新作『とのこい』は、どのようなきっかけで生まれたのでしょうか?

 今作はとても珍しくて、眠っているときに夢で見たお話が『とのこい』でした。
 見られたのは冒頭部分だけだったのですが、起きたときに「すごくわくわくしたし、自分には珍しいタイプの主人公とお話だ」と感じて、いつかむきあってみたいと願っていたのが実現したかたちになります。

新作『とのこい』は、どんな物語でしょうか?

 主人公の城島世じょうしま せいが会社の呑み会をした翌朝、事後の状態で目覚めたところから始まります。
 その謎の一夜の記憶を失っている世が、自分を抱いた犯人を捜すことになるのですが、ダンディな歳上の上司と、イケメンで有能な後輩と、世話焼き隣人大学生、という三人の容疑者のうち誰なのか――と追い求めながら、唯一無二の相手を見いだしていくお話です。
 ずっと書きたかったラブコメでもあります。

主要なキャラクターの誕生秘話や名前の由来などをお聞かせください。

 城島世じょうしま せい
  二十八歳の会社員でこの物語の主人公です。
  辛い失恋経験をしていて恋愛嫌いを公言していますが、哀しみをお酒にぶつけて酔っても泣かない不器用なひとで、甘え上手で、外見が大天使です。

 柳瀬敬介やなせ けいすけ
  四十一歳で世の上司です。
  ダンディで紳士な頼れる上司で、でも臆病で、世を導いてくれる素敵なパパです。
  気がひけるような超高級ではなくて、頑張れば手が届きそうなすこし豪華な美味しい料理店へ連れていってくれます。

 戸川仁とがわ じん
  世の会社の後輩で、二十五歳。世が教育担当した有能なイケメンです。
  外見も仕事も完璧で、他人のために腹を立てることのできる正義感の強い面もあり、非の打ちどころのない男ですが、世にだけお酒の席で駄々っ子みたいな姿を見せます。

 木崎真人きざき まこと
  世の隣人で、二十二歳の大学院生です。
  寡黙でいつも無表情。料理が好きで、世に朝晩の食事を作ってくれます。
  世が一夜の事件の相手を捜し始めたのは、真人に「犯人を見つけてこなければ料理作るのやめます」と叱られたからです。

 主要人物が多いのでみんなの紹介をさせていただきました。
 名前はいつも「こういう人物なんだ」と理解した瞬間に見えたものをそのまま使用しています。

新作のタイトルは、どのようにお決めになりましたか? また、タイトルに込めた思いがおありでしたらお聞かせください。

 主人公の世が三人の容疑者のなかから、のちに恋人になる相手を見つけるお話でもあるので、「――との恋」という意味のタイトルにしました。
 「――」の部分にその恋人の名前が入ります。
 作品には本編『城島世との恋』と、後日談のふたつのお話を収録していて、後日談の章タイトルにはしっかりと恋人の名前が入っています。
 でも文庫をひらいてすぐにある目次を見たとき読者さまに対してネタバレになってしまわないように、そちらも『――との恋』と隠してもらいました。
 実際に本編を読んでいただいて後日談の正式タイトルに辿り着いたとき、読者さまににんまりしていただけたら嬉しいです。

メインキャラクターは、どんな二人(攻めと受け)ですか?

 最終的に結ばれるふたりは内緒にさせていただきたいのですが、商業では初めての歳下がタチなお話になりました。

今作の読みどころやお好きなシーンのご紹介をお願いします。

 じつは謎の一夜の相手は早々に絞られて、明らかになります。
 ただ「なぜこの一夜の事件が起きたのか」という真相は最後まで謎なので、探るのを楽しみながら読んでいただけますようにと願っています。
 恋人同士で談笑していたりする場面はもちろん好きなのですけれど、一方で、ひとりが選ばれれば当然失恋している人間もいるわけで、そんな寂しい想いも大事に刻みました。
 ラブコメではありますが、恋愛の幸福と痛み、仕事を通して感じる充実感や劣等感なども彼らの心の一部として描いているので、あわせてお楽しみいただきたいです。
 また、装画と挿絵を近著『このて』に続いて丹地陽子先生にご担当いただきました。
 今作は登場人物の年齢に幅のあるお話だったので、どんな年齢の男前も鮮やかに描いてくださる丹地先生にぜひお願いしたい、と思ったからです。
 表紙からして「大天使」の異名に引けをとらない世が美しくて素晴らしいのですが、口絵や挿絵も大事な場面をじっくり選んでお願いしたのでぜひご期待ください。

彼らを書く上で、大切にされたことや、こだわられたことがありますか?

 執筆前は世の視点のみにして、恋人になるふたりの恋愛をメインに描くつもりでいました。
 失恋する人物たちの感情まで詳細に描くと、読者さまの興味がそちらの救済に持っていかれてしまうだろうという懸念があったからです。
 でもみんなの想いを描いていくうちに全員の恋情や生きざまが愛おしくてしかたなくなってしまったうえ、『とのこい』というお話には必要だと判断して、それぞれの視点で心情を語る章も加えた群像劇のようなかたちになりました。
 最終的に全員がきちんと幸福を得ていますので、そちらも安心してご覧いただけたらと思います。

朝丘先生の中で、書き進めるうちにキャラクターやプロットに変化や発見がありましたか?

 『とのこい』に限らず、登場人物たちが自分の意思で生きていくさまをただ書き起こしていく、という執筆スタイルなので毎回発見だらけです。
 今作では世が隣の真人の部屋へいくとき、チャイムを押しながら「真人君、真人さま、まこまこり~ん」と変なあだ名で呼んだりするお茶目な個性もたくさん見せてもらいました。
 こういう個々の細かくてなにげない性格があらわになってくると、血の通った人間に寄り添っているんだと実感して、小説を書く楽しさを味わいます。

苦労された点や楽しかった点はどんなところでしょうか?

 どの作品も違った楽しさがあって、たとえば先にご紹介した『このて』では主人公のふたりと「正しさ」について深く思考するのが楽しかったのですが、『とのこい』は二十年間小説を書いてきたなかでもっとも「わくわくきゅんきゅん」を楽しんだ作品になりました。
 わくわくきゅんきゅんな作品の場合は勢いでどんどん進められるせいか、十数年ぶりに一ヶ月で書き終えてしまった作品でもあります。

執筆中のエピソードや裏話などがありましたら、お聞かせください。

 作中にでてくる大黒パーキングエリアや、横浜のクリスマスマーケットへいきました。
 他作品も含め、登場人物たちのことを想いながら作品の舞台を歩いてみると、何度か訪れたことのある場所でもまた違った息づかいを感じて幸せになります。

創作に入られる際、タイトルとプロットは、どちらを先にお決めになりますか?

 登場人物たちの恋愛や人生が見えてきて、映画を観るみたいに寄り添って眺めて想いを巡らせたあとタイトルが決まります。

お気に入りのキャラクターや書き(動かし)やすい、または思い通りにならないなど、キャラクターで違いがありますか?

 いつも登場人物たちの想いに寄り添って、彼らの心を演じるような感覚で描いているので、極端な話、輪廻転生をしている人物など、自分が経験できない人生を生きている人物に対してはその感情を己のものにするまで時間を要したりします。
 でもすべてひっくるめて小説の楽しさで、書きにくいとは思いません。

作品を書かれる上で大切にされていることや心がけておられること、意識しておられることはありますか?

 作者である自分の欲や価値観を入れないこと。
 意図して物語を動かそうとせず、登場人物たちの心と衝動のみを誠実に描くこと。
 「運命」はわたしではなく、彼らが見つけて受けとめていくものだというのを裏切らないこと。

癒やしのアイテムや気分転換の方法、またハマっていることなどがおありですか?

 数年前自然豊かな田舎町へ引っ越してから、山や川を眺めて歩くのが癒やしです。
 春になると庭の竹林でたけのこを採って、近所の田んぼで苗が育っていくのを見守りながら、我が家もトマトやピーマンやナスを育て始めます。
 毎朝、苗にお水をあげて、元気に育った野菜を食べるのが楽しみです。

最近読まれた小説・コミック・映画などでおすすめの作品はありますか?

 『とのこい』を書いたあと、歳下がタチのお話も好きだと気がついてマミタ先生の『40までにしたい10のこと』を読ませていただき、大好きになりました。
 現在追いかけている作品はおげれつたなか先生の『ハッピー・オブ・ジ・エンド』と、志村貴子先生の百合作品『おとなになっても』、和山やま先生の『女の園の星』と『行こ』シリーズなどです。
 可能な限りアニメも配信でチェックしているのですが『【推しの子】』は本当に衝撃でした。
 ずっと心酔している犬居葉菜先生の『狼への嫁入り~異種婚姻譚~』の2巻も楽しみにしています。

BLで萌えるシチュエーションやキャラクター設定を教えていただけますか?

 歳上×歳下の歳の差が大好きでそういうふたりの恋ばかり書いてきましたが、『とのこい』のおかげで歳下×歳上もたまらなく好きだと気がつきました。
 「待て」ができる忠犬タイプの実直で一途な歳下が好きです。
 そして歳下君のいいところは普段敬語で、時々タメ口になってくれることだと思っています。

今後の作品でチャレンジしたいテーマやモチーフはありますか?

 歳下がタチのお話をまた書きたいです。
 念願だったラブコメも本当にとっても楽しかったので、今後も書けたら嬉しいです。
 あとはツイッターなどプライベートな場所になると思いますが、過去に書いてきたお話の子たちの現在の幸せなようすも時間を見つけて書き続けていきたいです。

読者様にメッセージをお願いします。

 インタビューまでおつきあいくださいまして本当にありがとうございました。
 ボーイズラブレーベルで書かせていただいておきながら「萌」を描くのが下手で反省することも多いのですが、『とのこい』は恋愛がお話の中心にあるおかげでときめきやぬくもりをたくさん描けたように思います。
 癒やされる作品が多く支持されている昨今、時代にもあっているのかもと期待はあれど、そもそも彼らと一緒に過ごしていたあいだわたし自身が終始幸福で、癒やされ続けていました。
 執筆を終えたあとも何度も読み返して、恥ずかしながら彼らの恋に浸っていたほどです。
 手にしてくださった読者さまにも、なにかとしんどい毎日の隙間時間に「この場面だけでも読もう」と本をひらき、楽しく満たされるような作品になれたならと祈っております。
 恋の駆け引きや、気を許した相手との軽快な会話のやりとり、失恋の苦い想い、恋人同士のいちゃいちゃした幸せなひとときなど、『とのこい』は多種多様な場面をご気分にあわせて味わっていただけるはずです。
 まずは、ぜひ世と共に謎の一夜の真相を探りながら、唯一無二の幸福を分かちあってやってください。
 どうぞよろしくお願いいたします。

とのこい

著:朝丘 戻
ill:丹地陽子

フロンティアワークス/ダリア文庫

発売日:2023年07月13日

STORY

謎の一夜の相手は3人のうちの誰なのか。
永遠を知る、――との恋

28歳のサラリーマン・世は、恋愛が苦手なゲイ。
会社の呑み会の翌日、目が覚めると明らかに「事後」の様子で、記憶が無い世は誰と一晩を過ごしたのか全く分からない状況に。
詮索しないでおこうと考えるも、隣人の大学院生・真人からは「必ず犯人を捜してこい」と言われてしまう。
思い当たる人物を辿っていく世だが、その行動が後輩の戸川、上司の柳瀬との関係まで変えていくことになり――!?

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