『渇仰 新装版+渇欲』2冊同時発売記念 宮緒葵先生インタビュー

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インタビュー

ペンネームに由来がありましたら、教えてください。

 私は古い武家の末裔なので、『宮緒』は関ケ原の合戦を生き抜いたご先祖様の名前から、『葵』は一番出世したご先祖様の家紋から頂きました。本当は全く別のペンネームを考えていたのですが、諸事情で使えなくなってしまい、慌てて考え直さなければならなくなったのでご先祖様に縋った、という経緯があります…。

『渇仰シリーズ』は、どのようなきっかけで生まれたのでしょうか?

 一方は相手にひそかに憧れつつも強い嫉妬と憎悪を抱き、もう一方は相手に混じり気の無い執着と愛情を抱いていて、相手に愛されるためなら人生でも命でも差し出してしまう…という関係性を書きたくなり、そこに設定を盛り込んだら『渇仰』になりました。最初、達幸はもっと理性的というか、淡々と計画的に明良を追い詰めていく感じのキャラだったのですが、何故か気付いたらあんな犬になっていて自分でもびっくりしました。

タイトルは、どのようにお決めになりましたか?
また、タイトルに込めた思いがおありでしたらお聞かせください。

 確か、何十個も提案したタイトルに全部ボツを喰らってしまい、こうなったらもうBLのタイトルらしくなくてもいいから思い切り達幸らしいのにしよう…! と思って『渇仰』を提案したらあっさり通った記憶があります。達幸にとって明良は全てであり、人の姿をした神様みたいな存在でもあるので、『渇仰』はぴったりかなと。

創作に入られる際、タイトルとプロットは、どちらを先にお決めになりますか?

 ほとんどの場合はプロットが先です。タイトルは初稿が完成してもまだ決まっていないことが多いですね…。タイトルつけるの、すごく苦手なんです。なので『渇仰』も、プロットのタイトルは『俳優犬攻め』でした。

攻め:達幸、受け:明良の誕生秘話やキャラ設定への思い入れなどをお聞かせください。
名前の由来なども、お聞かせいただけますと嬉しいです。

 達幸は私の脳を食い破るようにして生まれたキャラです。当時の担当さんと『だいたいこんなキャラとお話になります』と電話で打ち合わせをしてからプロットに入ったんですが、その段階ではもっと知性が高く理性的な策士タイプの攻めでした。なのにプロットを書き進めていくうちに人間の姿をした犬みたいなキャラになってしまったので、私もですが、担当さんも驚かれたと思います。どうしてこんな犬になったのか、今でもわかりません。
 攻めが重すぎる駄犬になってしまったので、明良は攻めに嫉妬する受けという前提を守りつつも、どんな攻めでも受け容れられる器の主にしてみました。こちらはおおむねイメージ通りのキャラになったと思います。
 名前については、達幸は『幸せがたくさんやって来るように』と願いを込めて、明良は読んで字の通り『明るい良い子』のイメージです。良い子はともかく、明るいんじゃなく不憫な子になっちゃいましたけどね…。

苦労された点や楽しかった点はどんなところでしょうか?

 初稿を執筆したのが今から十年近く前なので、インターネットやデジタル関連の環境がかなり変わってしまっていて、違和感が無いよう修正するのがけっこう大変でした。あと文章そのものも十年前と今とではけっこう違うので、今の文体で書き直すかどうか迷ったんですが、当時の勢いを大事にしようと思い、ほぼ当時のままにしました。今では使わない表現を多用していたり、今ならひらく言葉を漢字にしていたり、当時の自分と久しぶりに再会したようで楽しかったですね。

物語が進むにつれて、登場人物たちの関係性やそれぞれの性格も、変化や成長が感じられます。
宮緒先生の中で、巻を重ねるうちに変化や発見がありましたか?

 最初はとにかく明良を物理的に傍に置いておかなければ不安で、少しでも姿が見えなくなるときゅんきゅん泣いて(なんて可愛いものじゃないですが…)いた駄犬達幸が、ご主人様(明良)は傍に居なくてもちゃんと自分を思っていてくれると理解し、ほんの少しだけでも『待て』が出来るようになったのはとても大きな進歩だと思います。
 今回、新装版発売に当たり久しぶりに達幸たちを書きましたが、以前は見えなかった彼らの過去や未来が頭に思い浮かんできて、私が書いているのは彼らの人生のほんの一場面でしかないんだと思わされました。これからも続く彼らの人生を、もっと書いていきたいです。

今回2冊同時シリーズ刊行という運びとなりました。
進行中、楽しかったことや苦労したことなどあれば教えてください。

 楽しかったことと言えばもちろん、梨とりこ先生が新たに描き下ろして下さったイラストを拝見出来たことや、久しぶりに達幸と明良を書けたことです。書き下ろしのネタをSNSで募集したり、担当さんと相談したりすることも。
 苦労したのはやはり校正や諸々の確認作業が二冊分あったことですね…。特に校正は、特典も合わせると三十万字以上やったと思います。それもまた、終わってみれば楽しい思い出ですが。

執筆中のエピソードや裏話などはございますか?

 攻めに憧れつつも憎む受けと、受けに命と人生を捧げる執着攻めがテーマだったので、それ以外の設定は何でも良く、プロットを作る時は達幸の職業が二転三転しました。戦闘機のパイロットとか、メジャーリーガーとか、医師とか。でもどれもボツになってしまい、最終的に俳優に落ち着きました。他の案が通っていたら、今とはまるで違うストーリーになっていましたね…。

癒しのアイテムや気分転換の方法、または効果的な息抜き方法などがおありですか?

 紅茶を飲むことと、うちのお猫様たちをモフモフすることですね。うちの猫は穏やかで何をしても怒らず、何時間でもモフモフさせてくれるので、行き詰まるとお腹に顔を埋めさせてもらっています。たまにそのまま寝落ちしちゃうのだけが難ですが…。

作品を書かれる上で大切にされていることや心がけておられること、意識しておられることはありますか?

 どんなストーリーにするにせよ、私でなければ書けない要素を必ず入れるように心がけています。あとは現代が舞台のお話でなければ、その世界観に合った用語だけを使うとか、締め切りには必ず余裕を持たせて初稿を完成させるとか、ごく当たり前のことばかりですね。

読者様にメッセージをお願いします。

 十年近く前に発売された本を再び紙媒体で出し直して頂けたのは、ひとえに皆さんがこのシリーズを応援し続けて下さったからだと思います。本当にありがとうございます…! 達幸と明良の人生はこれからも続いていきます。成長し、変化し続ける二人をまだまだ書いていきたいと思っておりますので、どうかよろしくお願いいたします。

『渇仰 新装版』/『渇欲』

宮緒葵

(画:梨とりこ)

笠倉出版社/CROSS NOVELS

発売日:2021年12月10日

渇仰 新装版
渇欲

渇仰 新装版

宮緒 葵 デビュー10周年記念
代表作「渇仰」「渇命」が書き下ろしを含め、新装版にて復刊!

家も仕事も恋人も全て失った明良の前に、一人の男が現れた。 達幸――ある事件以降、六年間連絡を取らずにいた幼馴染だ。
若手人気俳優になった達幸との再会に戸惑う明良だが、気づくと高級マンションへ強引に連れ込まれ、「俺を明良の犬にしてよ」と懇願されながら身体と心を彼の熱い雄で、激しくかき乱され……!
大人気シリーズ「渇仰」「渇命」を一冊にまとめ、大ボリュームの新規書き下ろしを加えた新装版、ついに登場!

渇欲

宮緒 葵 デビュー10周年記念
代表作「渇仰」シリーズ番外編+書き下ろし、待望の商業化!

六年ぶりに再会した「世界一キレイなあーちゃん」こと明良に、念願の飼い主兼恋人になってもらえた人気若手俳優の達幸。
自身のマネージャー補佐として働く明良の前では「いい犬」でいる努力を続けていたが、本当は彼を誰にも見せず独り占めしたい衝動と戦って いた。
しかし、映画『青い焔』の公開オーディションに達幸の異母弟が参加することが判明し――。
「渇仰」と「渇命」の物語を繋ぐ重要なシリーズ番外編+書き下ろし、待望の商業化!

特典情報

【有償特典付商品】渇仰 新装版(単品)

有償特典『渇仰 新装版』アクリルコースター

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コミコミ特典『渇仰 新装版』イラストカード

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出版社ペーパー

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※特典はなくなり次第終了となります。
※商品ページに記載がある特典はお付けします。

©️宮緒 葵/梨とりこ/笠倉出版社

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