『わたしにください』発売記念 樋口美沙緒先生インタビュー

わたしにください

多感な高校生たちの、痛切ない恋と葛藤を描いた衝撃作!

インタビュー

10周年おめでとうございます!
デビューから変わらず心動かされる作品を発表されている口美沙緒先生ですが、振り返ってデビュー当時と現在で何か変化がおありですか?または、変わらないことがおありでしょうか。(創作にかかわることでも、日常のことでもなんでもかまいません)

ありがとうございます。ここまで来られたのはひとえに読者のみなさま、協力していただける方々のお力添えあってのことです。心から感謝申し上げます。

今と昔、基本的には変わりません。ただ自分のできないこと、できることが分かるようになったぶん、できることを頑張ろうと前向きになれるように変わったかもしれません。苦手な分野も、得意な分野を突き詰めていけば、アプローチする方法があると気づくようにもなりました。なんにせよ、自分が書けるものを書いているのは変わりませんが、あがいてもがいて書いているというよりは、これを書こう、と決められるようになった、というのはあるかもしれません。

新刊は、高校(回想を入れると小学生)時代から大人(26歳)になるまでの崎田路(みち)と森尾祐樹の物語ですが、今作品を描かれるきっかけを教えてください。

もともと十五年ほど前に書いた作品なので、そのときの動機ははっきりと思い出せませんが、過ちを犯してしまった人が、その過ちと向き合って、許されるにはどうしたらいいのか、許されるとはどういうことなのか、真剣に考えてみようと思って書き始めたことを覚えています。

タイトル『わたしにください』は、路に無いものを「もっている」森尾に対する、路の【劣等感】から生じる欲求だけでなく、森尾からの路への「想い」をも表している、そんな風に感じます。
作品タイトルを決める際のエピソードなどがありましたら、お聞かせください。

当時、ボランティアで、とある嗜癖(しへき)障害の施設に手伝いに行っていました。壁に、できないことをできないと知る分別を、できないことをできないと認める勇気を、わたしにください、という言葉が貼られていて、利用者の方と職員が、毎朝それを読み上げていました。

私はボランティアの立場でしたが、そのころ、自分にないものをたくさん感じていて、諦めなければならないけれど、諦めたくなくて苦しむことが多かったので、その分別や勇気をわたしにくださいと祈る気持ちは強かった。そしてそれは、分別や勇気に限らず、人生の様々な局面で、人が苦難に直面したときに思う祈りではないかと感じました。

なにを「ください」と祈っているかは人それぞれでしょうが、祈りながら生きている人々を書こうとしたときに、このタイトルをつけようと思いました。

本作品も個性的な人物がたくさん登場するのですが、書き(動かし)やすい、または思い通りにならないなど、キャラクターで違いがありましたか?その理由もお聞かせいただけますと嬉しいです。

十五年前は、黒田と大村が動かしやすかったと思います。今は路も動かしやすいです。

今も昔も難しいのは森尾です。森尾は私とは全然タイプが違うので、世界がどう見えているのかなあ、と、いつも不思議に思っています。

思春期に特有のちぐはぐさや確執、コンプレックスとの向きあい方、他者や自分を許す(許さない)ことと受け入れる(受け入れない)こと、たくさんの情緒にあふれた作品だと感じます。
口美沙緒先生がこの作品を執筆される中でのエピソードや裏話、苦労した点、また書いていて楽しかったシーンなど教えてください。

十五年前と今と、それぞれの時間軸でこのお話と向き合ってみて思ったことは、十五年前の私にとって、高校生というのはすごく近い存在だった、ということです。今では遠いので、高校という世界の中でなにが起きていて、どんな空気があるのか、よく知りません。でも昔の私は、すごく自然に書いているなと。なので時々読んでいて、そういえば高校ってこういうとこだったっけ!と思い出したりしました。

十五年前に書いていなかったら、書けなかった作品だと思っています。

口美沙緒先生がWEB上で、本作品について「精神修養の必要な作品」であり、「きちんと時間をとらないと書けないタイプの作品」であると仰っておられました。差支えない範囲で、理由をお聞かせいただけますでしょうか?

そんなことを言ってましたか?(笑)  自分ではすっかり忘れてました! でもたぶん、そう言ったのは、なんというか……路はともかく、森尾と私の心の距離がかなり遠いので、森尾の心の中にアクセスするには、時間をとって深く下りていかなければならなかったからだと思います。

ジョハリの窓、というものが心理学の考えにあります。人間には四つの側面があって、自分も他人も知る自分、他人だけが知る自分、自分だけが知る自分、自分も他人も知らない自分がいる、というものです。小説を書く際、私はこの四つすべてにアプローチしていくのですが、自分も他人も知らない自分、という窓を開けるのが一番難しい。難しさはもちろんどのキャラも難しいのですが、この窓が大きすぎると開けてみても深くて暗くて分からない。森尾の場合は、この窓が大きい上に開けるのが難しそうだなと感じていたので、覚悟して付き合わないといけないなあという、そういう気持ちで言ったのだと思います。

たくさんのキャラクターや作品の構想は、どのように生まれるのでしょうか?創作の秘訣や秘密をこっそり教えていただけますか?

分かりません!(笑)  なんとなくこういうのを書きたいな……から始めて、キャラクターとお話をします。書きながら、先ほど言ったような四つの窓を開けていく感じです。

作品を書かれる上で大切にされていることや心がけていることがありましたら、教えてください。

キャラクターは一人の人間なのだから、テンプレートで決めつけない、ということでしょうか。なんとなくテンプレートの看板を持たせても、そのあとできちんと本当のその人を探すように気をつけています。お話のためにキャラを動かしがちになると、ついテンプレートの看板だけ持たせてしまうので。

新たな10年の始まりに、チャレンジされたいこと、目標や抱負(夢)など、叶えたいことなどがありますか?

今までと違うことをしてみたいなというのはあります。大長編を書きたいのが最後の夢ですが、まだもう少し準備がいると思ってますので、とりあえずこれまで書いたことのないものや、エッセイやコラムなど、小説以外の文章のお仕事もしてみたいです。

読者様にメッセージをお願いします。

いつも私を支えてくださり、ありがとうございます。一人一人の胸の中に、生きていて漠然と感じる不安や、悲しみ、言葉のつかない苦しさや物足りなさ、なんとなく生きづらい気持ちがあるかもしれません。私は小説によって、それらの生きづらさを救ってもらい、ここまで生きてこられました。皆さまの生活の一つ一つに、そんなふうに役立てたらと思って書いています。もちろん、ただ楽しんでくださるだけでも嬉しいです。私を支えてくださっているのは、間違いなく読者さん一人一人です。あなたのために書いていますと、胸を張って言えます。そして、もし私の書いたものを読んで、なにか良い作用が起きたなら、それは私の力ではありません。読者さんの、あなたの力、勇気、優しさです。いつも私と、私の書いた登場人物たちを救ってくださり、ありがとうございます。心から感謝申し上げます。

作品紹介

わたしにください

”残酷で懸命な高校生たちの、痛い、青春。”

わたしにください-十八と二十六の間に-

”俺たちはまるで、違う生き物みたいだ――”

STORY

わたしにください

クラスメイトのほとんどから名前も覚えてもらえていない「学級委員長」の路は、自分とは何もかも正反対で、クラスでもカリスマ的人気の森尾が嫌いだった。

もちろん森尾も、路のことなど歯牙にもかけてはいなかった。
ところがある事件をきっかけに、路は森尾に組み敷かれ、その体をめちゃくちゃにされてしまう。

突然の憎しみをぶつけられ、森尾が自分を嫌いなことに、思いがけず傷つく路だったが――。

多感な高校生たちの、痛切ない恋と葛藤を描いた衝撃作!

出版社様コメント

デビュー10周年を迎えた口美沙緒先生が送り出すのは、思春期特有の複雑で残酷な恋情と、息詰まる切なさを描いた衝撃作。 対極にいる路と森尾の二人が交わる時に起こる悲劇とカタルシスが、感情を激しく揺さぶります。 「わたしにください」というタイトルに込められた意味を考えながら、読み進めていただきたい作品です。

わたしにください-十八と二十六の間に-

傷つけ合いながらも、ようやく距離を縮めることができたはずの路と森尾だったけれど、それぞれの恋情はこじれたままだった。

路への強い想いを自覚しながら、路を激しく傷つけた自分が許せず、再び想いを伝える資格がないと思い悩む森尾。
そんな森尾を追い詰めるかのように、後輩・臼井が路から「退け」と森尾に迫り……。

「わたしにください」のその後、多感な高校時代を経て、大人になるまでを描いた続編登場。
痛切ない恋と葛藤が胸を揺さぶる衝撃作!!

出版社様コメント

恋の始め方を間違ってしまった路と森尾。二人の想いはすれ違い、思わぬ方向へ進んでいきます。 犯した罪を許すのは他者か自分か。それぞれの「願い」と「祈り」が胸に迫る続編。二人の想いをどうか最後まで見届けてください。

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