『雪原の月影 三日月』発売記念 月夜先生インタビュー

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インタビュー

ペンネームに由来がありましたら、教えてください。

「月」と「夜」の漢字や連想するイメージが好きだったので合わせ技でつけてみました。 読み方は「つきや」です。

9月刊『雪原の月影 三日月』10月刊『雪原の月影 満月』は、どんな物語でしょうか?

辺境地で生きる人々の苦難、そして、どれほどつまらない小さな土地でも命を懸けて守る、「一所懸命:ひとつ所に命を懸ける」というお話です。
食べていくだけで精一杯になるとどうしても、足元しか見えなくなります。ですが少しずつ生活に余裕が出て来て、少しずつ未来を見るようになる。
民に知恵がつけば為政者にとって扱い難くはあるのですが、それでも、自分の足で立ち、自分の頭で考え行動してほしい、それが領主エルンストの願いです。
領主が家についてくる役職ではなく、国が任じる役職の世界です。遠く離れた王都の事情に辺境地メイセン領は振り回され、蔑ろにもされます。
過去100年間、領主のいない土地でもありました。今後、同じようなことが起きたとしても領民だけで歩いていけるようにとエルンストは奮闘します。

『雪原の月影』は、どのようなきっかけで生まれたのでしょうか?

友人との待ち合わせ場所に3時間も前に到着し、カフェでの時間つぶしで書いたのが始まりです。

創作に入られる際、タイトルとプロットは、どちらを先にお決めになりますか?

「プロット」という言葉と意味を、いただいた感想で知りました。
これが小説の書き方か、と衝撃を受け、試してみたこともあるのですが私にはできませんでした。
子供時代、雑誌の付録を「作り方」を読まずいきなり自分勝手に作っていたのですが、それが持って生まれた性格かもしれません。
ぱっと浮かんだことはすぐにやりたい。お話もそんな風に書き進めています。
書きながら、ふっと旗が立つ時があります。その旗を目指してお話を書き進め、到達したらまた旗が立つ。
何度か繰り返していくと完結していた、そんな書き方です。
タイトルもお話のテーマも書き進めていくと、そのうち決まります。

新作のタイトルは、どのようにお決めになりましたか?
 また、タイトルに込めた思いがおありでしたらお聞かせください。

「朔月」を書いている途中、主人公エルンストが領地に入って雪原に沈む夕日を見ます。
この場面で「雪原」にしようと決めました。
でも「雪原の太陽」や「雪原に沈む夕日」ではしっくりこず、「月」の漢字が好きなので、「雪原の月」「月光」と考え、最終的に「月影」にしました。

後に「タージェスと白金の小袋」というお話を書いた時に「雪原の月影」の意味が出て来て、自分でも「なるほど」と納得しました。

挿絵3

メインキャラクターは、どんな二人(攻めと受け)ですか?

主人公エルンストは60年間為政者となるべく教育を受けています。そのため、人と話す時に曖昧な言葉は決して使わず、決断を他人に委ねることもしません。
自分が気ままに振舞うことによって周囲に混乱を生じさせてはならないと、厳しく自己を律します。
そんなエルンストがほっと一息つけるのが、伴侶であるガンチェの前だけです。

もう一人の主人公ガンチェは戦闘種族として生まれ、傭兵として10数年を過ごしています。
何者にも縛られず、自分で道を決め、腕一本で生きてきた。
そんなガンチェがエルンストと出会い、今までの生き方の全てを変えます。

辺境地メイセン領を少しでもよくし、民の生活を向上させようと二人は頑張ります。
ですが、根幹にはいつも「2人の関係を崩されるくらいなら領地も国も捨てる」という考えがあります。
エルンストにとって一番に大事なのは年下の可愛い伴侶ガンチェであり、ガンチェはエルンスト至上主義です。

領民や領兵も、二人のそんな考えは苦笑交じりに理解しています。
「うん、仕方ないよね。うちの御領主様は」てなもんです。

挿絵3

主要なキャラクターの誕生秘話やキャラ設定への思い入れなどをお聞かせください。名前の由来なども、お聞かせいただけますと嬉しいです

基本的にカフェで書いているので、キャラ名や地名はカフェメニューからつけています。
メニュー表からつけられる名前が枯渇すると、貼られているポスターやパソコン上の文字「ファイル」「ソフト」などからつけました。
キャラに名前がつくと、彼らに個性が生まれ、勝手に動き出してくれます。

ちなみに「カタ村」「ラテル村」は「カフェラテ」です。

メインカップル二人を描く上で、大切にされたことや、こだわられたことがありますか?

ガンチェは戦闘種族のため、即断即決即行動、の人です。
他の種族からは粗野なイメージを持たれますが、契約社会に生きる種族のため、高い読解能力を持っています。
そして、常識人でもあります。

反対にエルンストは性にオープンなところがあり、ガンチェを含む周囲は彼の言動や行動でわたわたすることも多いです。

エルンストには「苦笑した」「困惑した」という表現は使わないようにしました。
ガンチェの前だけでは自由にどんな表情でもするのですが、他のキャラがいる時には極力させないようにしていました。
そして、エルンストの会話文では「~と思う」「多分~だろう」という曖昧な表現は避けています。
基本的に「明言」と「無表情」でお話を進めました。
数字もできるだけ一桁単位まで明確にしています。

という決まり事も全て、ガンチェの前でだけは解放されるので、二人っきりの場面は書きやすかったです。

『雪原の月影』の読みどころやお好きなシーンを教えてください。

「朔月」馬と別れるシーン
「三日月」民を集めての協議
「上弦の月」元老院での協議
「下弦の月」たすき掛けの鳥
「満月」全て!(自画自賛みたいで申し訳ないです……)

「満月」特に「ガンチェの満月」は泣きながら書いていました。
自画自賛で本当に申し訳ないのですが、「雪原の月影」は自分で書いていて泣きそうになった場面が三つあります。
それが「朔月」の馬と別れるシーン、「タージェスと白金の小袋」の先代国王に向けた敬礼、「満月」です。

物語が進むにつれて、登場人物たちの関係性やそれぞれの性格も、変化や成長が感じられます。
月夜先生の中で、巻を重ねるうちにキャラクターやプロットに変化や発見がありましたか?

お話を書き進めるとキャラの個性や立ち位置がはっきりしてきますので、彼らは勝手に動き始めます。
私は書いている時はできるだけ自分の感情を消し、お話が進むに任せます。

お気に入りのキャラクターや描き(動かし)やすい、または思い通りにならないなど、キャラクターで違いがありますか?

エルンスト・タージェス・ブレス・ミナハ、は書きやすいです。
いつも勝手に動きますし、漫談もはじめてくれるので楽しいです。

集団の中にいるガンチェは書きにくいです。
エルンスト以外の人がいる時は極力黙ってしまうので、気づくと空気になっています。
「ガンチェどこ? 消えた?」と思われそうで、無理矢理口を開かせたり、エルンストの視線を向けたりしていました。

※お話はエルンスト視点で進みます。

執筆中のエピソードや裏話などはございますか?

お話を書いていると3行くらいでズドーンと沼に落ち、はっと気づくと3時間経過、なんてことがよくありました。
「雪原の月影」は次から次にお話が進んでいき、脳内で繰り広げられる舞台をパソコンで打っていく。
打つ速度の方が負けて指が釣りそうになったり、書いていて本当に楽しかったです。

「雪原の月影」で忘れられない裏話は、「タージェスと白金の小袋」です。
お話を書き終えて投稿サイトに半分を投稿した時点で、なぜか、残りのデータを削除してしまいました。
同じ話を二回も書くのは面倒だなと、投稿している前半部を消そうとしたのですが、「続きが楽しみです」というような感想をいただきそれもできず。
無理矢理続きを書いてみたら元のお話の1.5倍になりました。
結果的に、書き直してよかったです。

気分転換やリフレッシュの方法、癒しのアイテムなど、教えてください。

お話を書いていると別世界を楽しめるので、書いていることでストレス解消になっています。

美味しいものを食べたり、映画を見たり、誰かと話したり、ツィッターでフォロワーさまたちに遊んでいただいたり、他にも色んな楽しみがあります。
一緒に生活をしている秋田犬の通称「秋田さん」や2匹のにゃんず、通称「にゃん&こにゃん」も癒しです。

BLで萌えるシチュエーションやお好きなキャラクター設定をお聞かせください。

がっつり両想いになっている二人が手を繋いだり、肩を寄せ合ったり、自然とじゃれているのが好きです。
そして、ギャップ萌え!
職場では沈着冷静、冷酷無比、俺様、なんて人が二人きりの時だけ、構いたがりで余裕のない攻めになったり、甘々のスパダリになったりするのに萌えます。
体格差、年齢差、身分差、なんてのも好きです。

作品を書かれる上で大切にされていることや心がけておられること、意識しておられることはありますか?

お話を自由に動かせることです。
浮かぶままに書いて、後で読んで齟齬や文章を訂正する。
書いている途中は極力、自分の意識をお話の中に組み込まないようにしています。

今後の作品でチャレンジしたいテーマやモチーフはありますか?

政治的に込み入ったお話や、ミステリー、すれ違いの切ない系、ほんわか甘々、獣人……あり過ぎます!

読者様にメッセージをお願いします。

少しでもご興味を持ってくださり、2~3頁でも読んでやろうと思ってくださったらとても嬉しいです。
※試し読みにはBL小説投稿サイト「ムーンライトノベルズ」さまで公開中の「雪原の月影」をご活用ください。
素人丸出しの荒いお話ですが、本筋は何も変わってはいません。

もし、もし! 
投稿サイトをご覧になってなお、書籍を手に取ってやろうと思われたなら、ぜひ、プロの編集様にいただいた改稿案ですっきり生まれ変わった「雪原の月影」を見てやってください。
体脂肪率20%を切っているようなお話の読みやすさに気づいていただけると思います。

そして、稲荷家先生が本当に美しくカッコいいイラストを描いてくださっています。
私のお話は「うーん……」と思われても、どうぞ、先生のイラストを御覧になってください。
ガンチェがとてもカッコよく、先生のイラストで一本書いてしまいました。

雪原の月影三日月 / 満月

月夜

(イラスト:稲荷家房之介)

リブレ

雪原の月影 三日月

発売日:2021年09月17日

雪原の月影 満月

発売日:2021年10月19日

上巻あらすじ

WEB発BLノベル
唯一無二の伝説的傑作が完全版で刊行!
書き下ろしも収録!

老人となっても少年のまま、成長することのない病、クルベール病。
皇太子でありながらこの病に冒されたエルンストは、位を剥奪され、国内で最も貧しい領地メイセンの領主に任じられる。
初めて見る城の外の世界。微かな不安と、不思議な高揚。
エルンストは彼にひそかに想いを寄せメイセンまで追ってきた戦闘種族の男ガンチェと恋に落ち、共に生きることを誓う。
そして、窮乏するメイセンで極貧生活をおくる領民を救うため、二人は共に、未来に向けて種を蒔き始める。
だが、エルンストの病をめぐる謀略が明らかになり始め…!

下巻あらすじ

「ガンチェが側にいてくれるだけで、私は強くあれる」

少年の体のまま成長できない病におかされた元皇太子エルンストは、国内最貧の領地メイセンを救うために、知恵で奮闘する。
エルンストと出会い、己の生き方の全てを変えた戦闘種族の男ガンチェは、エルンストの命を奪おうと襲ってくる敵を迎え撃つ。
強い絆で結ばれた二人。ガンチェへの想いが募るたび、エルンストの胸を締め付けるのは、自分とガンチェとの寿命の差だった…。
そんな時、隣国がメイセンに侵略を開始し…!
光あふれる未来へ――WEB発BLの伝説的傑作が完結! 書き下ろしも収録。

人物紹介

エルンスト・ジル・ファーソン・リンス・クルベール/
リンス国元皇太子。
現在は公爵。
外見は少年だが、中身は有能な施政者。60歳。

ガンチェ/
戦闘種族ダンベルト人の元傭兵。
エルンストの体液適合者。26歳。

特典情報

雪原の月影 三日月

コミコミ特典月夜先生書き下ろしペーパー

コミコミ特典ペーパー

+

コミコミ特典B5クリアファイル

コミコミ特典ペーパー

商品ページはこちら

※特典はなくなり次第終了となります。
※商品ページに記載がある特典はお付けします。

©️Tsukiya/libre 2021 Illustration:Fusanosuke Inariya

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